「聞きたくない!」の思いから、突発性難聴に

執筆者 | 10月 9, 2016

60歳代のYさんは、紹介で来られました。
カルテの主訴の欄には、「メニエール氏病からの右耳の突発性難聴で、もう20年近く経過している」とありました。
「他にはどこも悪いところはないんです」とのことでした。

初回、右頸部の深部に凝りを感じたので、それを溶かすよう施療を行いました。施療後は「全体的に軽くなったけど、耳は変化ない」と言って帰っていかれました。
その時私は「20年も経過しているのでは、正直難しいのかもしれない・・・」と感じました。そして「もう来院されないだろうな」と思ったのです。

ところが、後日Yさんから施療の予約の電話が入ったのです。
来院されたYさんは、「前回受けてから、首がよく回るようになったのよ!」と驚かていました。そしてそれを機に、定期的に続けて来られるようになりました。
「こんなに首が回るもんだとは! 回りにくいとも全く思ってなかったのに」
毎回、施療後に可動域が広がることにさらに驚かれているようでした。

やがて、難聴の耳の方にも響きがあり、「なにか温かいものが耳に流れる感じ」を実感されていました。

そして、左右10:2くらいの割合でしか聞こえなかったのが、10:4くらいまで聞こえるようになってきたと喜んでおられました。

そんな時です、Yさんの心の内をうかがい知る話を聞くことができたのは。
現在は旦那さんと息子さんとの3人家族ですが、結婚当初から長年、お姑さんとも同居されていたそうです。
一日の長い時間をお姑さんと二人で過ごさなければならず、そんな中でいつも旦那さん、息子さん、そしてYさんへの不平不満をぶつけてきたそうです。
それが何年も何年も続いたのでした。
「もう嫌だ!もう聞きたくない!何も聞きたくない、聞きたくない!」と、心でずっと叫びながら過ごされたのです。

そして、お姑さんが亡くなられ、ようやくその状態が終わりました。
安心した途端、Yさんは、突然片耳が聞こえなくなってしまったのでした。

「聞きたくないって自分にずっと言い聞かせてしまったから・・・本当に聞こえなくなってしまって・・・ 仕方ないですね」と。
明るく笑ってはおられましたが、その笑顔の下には、ぎりぎりまで思い詰めるほどの苦しさが隠されていると感じずにはいられなくて、とても切なくなりました。

半年くらい通われたYさん。聴力が100%戻ることはなかったけれど、施療中は耳がスーッとしてきて気持ちがいいし、10:5くらいにまで聞こえるようになって嬉しいと言われていました。
その時センターで開催されていた「気と心の学校」にも関心を持ち受講されました。
心身ともに実年齢とは思えない若々しさと生き生きした笑顔が、今でもとても印象に残っています。

野本ゆうこ (京都・日本)