ある政治亡命者

執筆者 | 10月 7, 2016

RIVOと言う団体があります。
これは各種有志セラピストが集まっている団体で、そのセラピーはいわゆる政治亡命者、それに伴う拷問などの圧制の犠牲者たちを対象にしています。
私は過去5年間この団体に属し、数々の人々の治療にたずさわってきました。

亡命先にも本国にも居られない

その団体の活動の中で出会ったKさんは、アルジェリアの出身で、視力障害のある人でした。
アルジェリアの内戦のため1996年にアメリカに亡命し、2002年まで滞在したのですが、9・11以来のイスラム教徒への差別政策により本国へ強制送還されるところでした。
そこをカナダ在住の彼の友人に救われ、その尽力によって、とりあえずカナダのモントリオールの教会へ難民として受け入れられました。
しかし、彼は「いつか、捉えられて強制送還されるのではないか」という疑心暗鬼に取り付かれてしまいました。
そのため、あてがわれた畳4畳分くらいの自分の部屋から外へ出ることができませんでした。

治療を受け入れてくれた彼は

私は、そのような状態だった彼を治療する機会に巡り合いました。
治療は2週間に1度のペースで、2年余り続きました。
はじめ彼の『気』は重く、恐怖感はとても強く、気分は落ち込んでいました。
また、恐怖感のためか、体中に痛みを感じていました。
しかし、彼は私の治療を受け入れてくれました。
私はとても強い彼の感謝の気持ちを感じることができたのです。
やがて、治療を重ねるごとに、彼の『気』は軽くなっていきました。
睡眠もぐっと深く長くなり、心も休めることができるようになっていきました。

人生の再出発

そして治療を始めてから1年もたつころには、彼の思考もポジティブなものに変わってきました。
運動を始め、将来に希望を持てるようになったのです。
さらに1年たつと、カナダの居住権をとることができました。
そうです、彼は、その時にはそのような現実的なことも考えられるように
なっていたのです。ついに彼は、3年近く住んだ教会を出る決心をしました。アパートを借りて再出発を期すことになったのは、それからすぐのことで
した。
私が、心をこめて、最後の治療をさせてもらったのは、彼の新居ででした。

ローレンス・レフコート