笑顔になることを願う

Jさん(50代・女性)が初めてタオ療法を受療されたときの主訴は、全身が固まっている感じで、特に胸の周りが苦しくて呼吸が出来ないというものでした。
また、便秘もひどくお腹が苦しいということでした。
半年くらい前に心療内科でうつと診断されたJさんは、何種類かの薬を処方されたものの、薬を飲み続けることに不安を感じていらっしゃいました。
薬を止めたいという思いもタオ療法を受療された動機の一つでした。

住んでいる環境で相当なストレスを感じていて、引っ越しも考えたけれど、様々な事情が重なり引っ越すことが出来なかった。自分が我慢すればいいんだと思って過ごしているうちに体調を崩してしまった。

うつむいたままでお話しされるJさんの表情はとても固く、声も小さく、身体も心も張り詰めて緊張しきって、そして疲れているような印象でした。
私は、Jさんが薬をやめることはもちろん、何よりも笑顔になることを願いました。
というのも、「この方の笑顔はきっと素敵だろうな」と感じたからです。

呼吸ができる!

基本手技を始めると、それほど強くないと思われるような圧でも、身体のあちこちで痛がりました。
そこで私は、さらにもっと心に触れるように施療をおこないました。
喨及師の著書に「深呼吸は大腸経のはたらきである」とあります。
私は、大腸経を意念して、下腹部に触れました。
「いかがですか?」と聞くと、「とても気持ちがいいです」という答えが返ってきました。
最善を願いながら、しばらくそうしていると、Jさんは、全身をふるわせるような大きな深呼吸をされました。そのような深呼吸を何度か繰り返しました。
そして、「ああ、呼吸が出来ます!」と、嬉しそうにおっしゃいました。

その後、施療を続けていくうちに、はじめは痛がっていたところも、痛いけれど気持ち良いという「響き」の感覚に変化していきました。
さらに、日を追うごとに、基本手技でツボに触れたときから、全身を使って深呼吸をされるようになっていかれました。
そんなJさんは、呼吸することを身体中で味わっているかのようでした。
「いのちが呼吸をしている」
からだが拡がっていくような感覚を受けとめながら、私はそのように感じました。

気持ちの変化が現れる

あるとき、受療に来られたJさんの雰囲気が、少し違っているように見えました。
「今日はいつもと違いますね」と聞きました。
すると、「あっ、気づかれました? 実は、メイクを変えたんです」と、答えてくれました。そのときの照れたような嬉しそうな、そして内面から自信が湧いてきたようなしっかりした表情が、とても印象的でした。
私は、そんなふうに、Jさんが「自分を新しく表現していく」と気持ちを変化させたことを何よりも嬉しく感じました。
そして、薬はお医者さんと相談して、血流を良くするという漢方に切り替わったというお話でした。以降、漢方以外は飲んでいないということです。

施療のあとのJさんは、リラックスした穏やかな表情をされます。
施療中の深い呼吸の繰り返しで、お顔の色も良くなっているように感じます。
そして、優しい笑顔を見せていただくことが多くなってきました。
時おり不安な気持ちが出てくるとお話されます。そのようなことをお話されるようになられたことも、気持ちの変化ではないかと感じます。

Jさんの深い大きな呼吸は、いのちが喜びを呼吸しているというイメージを感じさせてくれます。

後藤光妙 (中野・東京)