孤独と失恋

執筆者 | 10月 10, 2016

久しぶりに来院した大学生の彼は青白い顔で生気がない。
症状を聞くと、頚と肩凝りがひどく眠れないという。
触れてみると確かに固く、上腕と前腕までガチガチ。異常な固さだった。
改めて、彼の表情に目をやると、何だか、不安と恐怖で怯えているようにも見え、身体全体が悲痛で叫んでいるようだ。
とりあえず、施療を始めた。・・・手足が異常に冷たい。
「何か、ショックな出来事、怖い思いをされたことありませんでしたか?」
「・・・失恋をしました・・・。」
ちょっと驚いた。今までも、失恋のショックで来院した方を何人か診たが、ここまで身体に影響が現れている方は初めてだった。

考えてみれば、世間では、失恋で思い詰め、自死に至ることもあるくらいなのだ。
たかが、失恋、されど失恋である。
もしも、彼が、この砂漠のような東京で、彼女と出会うまで友だちもいなく、孤独で暮らしていたとしたら、、。彼女と出会い、お互いに惹かれ、愛しあえる関係になったとしたら、孤独も癒されたことだろう、明るい未来を描けただろう。

ただ、彼が、幼子が母親を拠り所にするように、彼女の存在を心の支えにしていたのだとしたら、彼女がいなくなることは恐怖だったろう。
そのために心身が固まってしまってもおかしくはない、、。
彼の全存在を私の心の中にイメージで入れながら施療を続けた。
腕から手指にかけ強く響く。ふと彼の顔を見ると目から涙が流れている。

二日後、二度目の来院。
ガチガチに固まった身体は、かなり柔らくなっていた。彼の表情にも生気が戻り、時折、微笑みも浮かべていたのでひとまず安心した。
彼には、この苦い体験が、目に見えない大いなる存在を拠り所にするきっかけになっていただければ、と思う。

長谷川友信 (中野・東京)