家族を戦争で亡くしたトラウマ

執筆者 | 10月 9, 2016

私はこの患者さんに会ってすぐ、「彼女の温かい微笑みの裏側には、苦しい痛みがあり、心は混乱に満ちているのではないか?」と感じずにいられませんでした。

治療前、彼女に症状を聞いてみると、長い間ひどい偏頭痛と頸部痛に悩まされているとのことでした。そしてそれは、まるで暗雲が常時左側頭部と目の辺りに渦を巻いているかのようだと話されていました。

まず基本手技(注1)を施したのですが、すでにその間中、彼女はかなりの「響き」を感じていたようでした。
間違いなく彼女は重いトラウマを過去に負っているのだと私は感じました。

基本手技の後、右を下に横臥になってもらい治療に移りました。
そして、私はその時に彼女から感じられることを率直に聞いてみました。
「もしかしたら、誰か近しい人を幼い頃に亡くされていませんか?」
幾分彼女は躊躇しながらも、
「戦争で父親を亡くしているけど・・・今まで忘れていたわ」と話してくれました。
私はそのことを踏まえて、首の後ろの「心経」(注2)に治療をはじめました。

しばらくすると、突然彼女は泣き出し、そしてそれは長く続きました。
その間、私は彼女をそのままにしていました。
そして、彼女が少し落ち着くのを待ってから、今度はさらに体全体へわたって「心経」を治療しました。

治療後、彼女は喜びに満ち、なんとも軽い気分になったようでした。
「そういえば、こんなに嬉しい気持ちになったのは、子どもの頃から感じたことが無かったわ」
その時、偏頭痛は暗雲とともに消えて去り、彼女は心の底からの微笑みに輝いていました。

・基本手技(注1):経絡治療に先立って行われる基本的な全身指圧のこ
と。
・心経(注2):全身二十四経ある経絡のうちの一つ。

アレックス・ペレクリタ (トロント・カナダ)