鼻臭症の奥にあったもの

執筆者 | 10月 10, 2016

来院のきっかけ

鼻臭症で悩んでいるという20代前半の男性が来院した。
西洋医学の病院に行ったが、はっきりした原因もわからず、「とりあえず、薬を、、」と医者に言われ、しばらく服用したが、
治る気がしないので止めた、ということだった。

「電車で隣席の人が離れた席に移動したり、前に立ってる人が鼻を押さえたり」ということがこの1年、ずっと続いたという。
うつむき加減で話す彼の語り口は、「もしかしたら、自分の病気は治らないのでは、、」と不安な気持ちで一杯、そんな風だっ
た。
私は自分の嗅覚はいい方だと思っていたので、彼に「私の顔に向って何度か鼻から思いっきり息をはいてみてください」と頼
んでみた。
確かに臭いはあった。が、しかし以前に施療した何人かの鼻臭の方の中でも、かなり軽い方のように感じた。そして、それを
彼に伝えると少し安堵されたようだった。

白砂糖断ちをすすめる

気になる症状は、それだけかと思いきや、「潰瘍性大腸炎もあって、これも半年ぐらい前からです。薬は、今も何種類か飲ん
でいます」と彼。
大腸炎と聞くと、条件反射的に甘いものの大量の摂取を疑ってしまう。
白砂糖は極端に陰の食べ物で身体を冷やす、さらに言えば、毒である。大腸の働きが弱り免疫力もガタガタになる。鼻は大腸
経に属するから、鼻炎や鼻水、そして鼻づまり等の症状が出ても不思議はないし、解毒を司っている肝経や胆経だって弱って
いるだろう。

すかさず、「甘いものは好きですか?」と尋ねると、案の定「大好きです!ほとんど毎日、食べてます」と弱く笑いながら答えた。
薬を止めて頂きたいのはもちろんだが、この方の場合、先ず白砂糖断ちが先だと直感した。

そこで、“白砂糖は万病の元”なのだと彼に伝えるが、にわかに鼻臭と因果関係があるとは納得しがたいという顔をしていた。

おそらく、どんな症状も、患者さんが白砂糖漬けの日々を送ったままタオ療法を施しても、残念ながら完治に至ることはない。
この患者さんの場合は、特にそんな気がしてならなかった。

そこで、前述した鼻の症状と大腸経のつながりをはっきりと伝えてみた。
すると、もともと素直な彼は、本気で、「砂糖絶ちます!」と約束してくれた。さらに、本気で、タオ指圧で治したいお気持ちも伝わってきた。
私はこの方は必ず治ると確信したのだった。

さらに奥にあったもの

週2回のペースで施療を進め、2ヶ月程経った頃だったろうか。
もう臭いは、ほとんどといっていいほど気にならなくなっていた。
しかし、そう伝えても、彼はまだ信じがたいといった表情を浮かべていた。

それはそうだろう。自分の臭いのせいで隣に座っていた人が、離れた席に移動した、なんていう経験を何度もしてしまったら、
にわかには信じられない気持ちだと思う。
そこで、私は彼に同意を得て、スタッフの女性メンバー2人に事情を説明し、彼の鼻の臭いがどんな感じかを実際に嗅いでも
らった。

結果は、やはりどちらも臭いは感じられなかった。
やっと少し気が晴れたのか、彼に笑みがこぼれたのだった。
「もう、数回で施療は卒業できるかもしれませんね」と伝えると、「、、はい(笑)」と彼。

また、何回目かの施療時に「電車で立っていて、目の前の女性が鼻に手を当てるとかはほとんどないです、、」と彼。
何故か喜びを全面的に表さない。心ここに在らずという表情を浮かべていた。

砂糖中毒からも抜け出し、時折、声を出して笑う場面も出てき
たのに、「何故、悲しげな気を漂わすのか、、、」
ふと、私に何か聞いて欲しがっている、そんな気がしてきた。

「、、なにか精神的にツラいこと、ありましたか、、?」
「、、、、実は、、、女性二人にふられました、、この数年で、、」
その内の一人は、彼に、大変、残酷なことをしたのだった。

あまりにショックな出来事なので、ここに書くのは控えるが、、。
大腸経が回復し鼻臭が治まったら、精神的ショックでダメージを受けた小腸経が、奥から表面近くに浮かんできて、症姿を見
せてきたのだ。

その後、数回小腸経を中心に施術した。
3ヶ月ほどで鼻臭症も治り、精神的ショックも癒され、彼はかなり元気を取り戻し明るくなった。

「なんだか未来に希望が持てます(笑)。彼女、、できますかね、、?」と彼。
「もちろん、できますよ!!」 私ははっきりとそう答えた。

長谷川友信 (中野・東京)