ただ、一人一人を大切にしていただけの先生

執筆者 | 3月 16, 2014

昔、こんな物語を読んだ。

ある小学校があった。環境が非常に悪かったので、卒業生は永い伝統にもとづいて悪い道を歩いていた。
ある日、一人の先生が、自分の受け持ちの20人の子供の名簿の下に、いたずら半分に「あと20年経ったら、この20人の生徒には、きっと麻薬、暴力団、売春、刑務所などの将来が

待っているに違いない」というような言葉を書いて、その名簿をファイルに入れたしまった。
それから20年の月日が経った。ある日ファイルを整理していた2人の男性の先生が、そのふた昔前のその名簿を偶然に見つけ、その予言を見た、。

、、予言は現実になってるだろう、、が、この目で確かめてみたくなった。

そして、たまたま暇だった2人は、卒業生に会いに出かけた。

ところが、最初に会ったと5,6人が立派な社会人になって、ちゃんとした仕事と家族を持っていた。

2人は驚き、この際、徹底的に全員に会ってみたくなり、、会った。

不思議だった。その学年の前の学年は、皆、どうしようもなかったのに、。

更に、その後の卒業生も皆が駄目になっていたのにもかかわらず、その20人だけは見事に救われていたことがわかった。

そういうわけで、その理解できかねる事実の原因を探ろうと思い、小学校時代、何か特別なことがあったかとか、いい先生がいたかとか、印象に残った出来事が起こったか、というような質問を一人一人に聞いて回り録音した。

卒業生の返事はみな曖昧なものだった。

「別に、、」

「普通だったけど、、」

そして、録音した回答を2、3回繰り返し聞いた。

すると、共通の言葉を発見した。

「女の先生」と、いう一言がほとんど皆の話しの中にごく自然に入っていた。

この女の先生が救いであったことに間違いないだろう、、そう推理した。

しかし、教務課でその先生のことを聞くと、確かに、昔、その学年には、

ある女の先生がいたけれども、教育者として全然よくなかった彼女は一年間だけで、すぐ辞めさせられた、と言った。

この学年だけしか教えなかった、、、という事実、決定的証拠だ。

早速、2人は、その女の先生に会いに出かけた。

既に、年老いた、お婆さんになっていた彼女の貧しい下宿に彼らが訪れたとき、昔の名簿を見た彼女は目を赤くして

「皆、本当に可愛かったわね、今も元気でしょうね」

と、言った。

そこで、

「先生の影響で皆、救われたのです。それで、先生の素晴らしい教育論を世間に知らせたいと思いまして、、誠に恐れ入りますが、インタビューを録音させていただきにまいりました」

、、、学歴と業績について聞き始めた。しかし、困ったことに

「すみません、私は頭が悪くて何も、、、」

という、返事しか返ってこない。また、教育の方法論について聞いても返事は同じだ。

「特別な説教とか、特別に厳しかったとか、優しかったとか、、、」

と聞けば

「いいえ、普通です、、」

そっけない返事の連続だ。

2人は、とうとうあきれて、ひそかに愚痴をこぼしながら、空ぶりの気持ちで帰る支度を始めた。

その時、名簿を夢中で見ていた彼女は

「しかし、皆、可愛かった、、、本当に好きだった、、」

と、静かな独り言を呟いた、。

 

、、、そんな物語だった。

さて、アタマが悪かったのは、2人の先生の方だった。

学歴とか説教とか、方法論とか、全く、ウザい、。

この先生は、ただ、一人一人を大切にしていただけだ。

愛情不足の子供たちは、誰か一人でもいい、この広い世界で誰か自分をほんとに大切にしてくれる、愛してもらえる人がいる、その単純な体験で救われるのだ。