膝関節痛の癒しと懐妊

Nさん、主婦。

膝関節の痛みを訴えられた。
「・・・痛みは、いつ頃からでしょうか?」
「・・・二年前くらいです。」

彼女は、半年前まで広告会社の企画部で働いていた。不況の最中、
班に分かれ社内で競いあっていた。
家に帰ってもリラックスできず、布団に入っても眠れない日々を送っていた。
そのうち、膝関節が痛み出してきたとのこと。

ポツリ、ポツリと話すNさんの顔は、“スマイルバッチ”のスマイルが半分泣いているように見えた。
「・・・今は、20分位歩くと痛くて休まないと歩けない状態です。」
それから、Nさんが記入した診療記録の“気になる症状”に再び目を落とした。
いくつかある中に、“流産したが、その後、なかなか妊娠しない”
「・・・・・・流産はいつごろだったんですか?」
「今年の3月です。それで会社は辞めました。
流産した後、なかなか妊娠しなくて病院へ行ったら『あなたは、疲れが溜まり易い体質だから、子供は産まない方がいい。』って言われて・・・
腹が立って、診察室、飛び出しました。それから病院には行ってないです。」
その医師に私も腹が立った。

そして施療を始める。
施療中、Nさんの小さい頃の話を聞く。
生まれた時に、医者から何度か叩かれて、やっと泣き声を上げたこと。
子供の頃から元気が無かったこと。父親の仕事柄、転勤が多く、余儀なく転校を繰り返してきたこと・・・等々。
しかし、そんな彼女の人生でも、元気だった頃があった。

10代半ば、東北のある町で暮らしていた頃だ。
「回りに自然が多かったから・・・あの頃は元気だったと思います。」
その頃の彼女を想像してみた。山や野原で遊んでいる姿を目に浮かべる。
きっと、その頃はあの“スマイルバッジ”の顔だったのではないか・・・。
一週間後。
「・・・施療していただいた翌日、結構歩いたんですけど、膝、痛くならなか
ったです・・・何なんでしょうか?!」

さらに、その翌週。
「夫が金曜日休み取れたので、思い切って二泊三日で京都に行って来ま した・・・
夫も結構ストレス溜まっていたんで・・・かなり歩いたんですけど、やっぱり膝、痛くならなかったです!坂道多くてちょっとへばりましたけど・・・
あっ、筋肉痛はありました・・・(笑)」

その後、数回、通われ、膝に痛みが戻ることもなさそうで、元気も出てきた。
半泣き“スマイルバッジ”顔から少しづつ泣き顔が減ってきたように見えた。
しかし気になる問題がまだ残っていた。
不妊。

Nさんご夫婦の住まいは、お二人それぞれのご両親どちらの住まいとも
近くにあることから、何かと顔を合わせる機会が多く、その度、孫を期待されるような気分になってくるようだ。
「・・・プレッシャー感じてるのかもしれません。」
施療の目的を“心の傷を癒す”に置きながら、ストレスに対する抵抗力が上がるよう、ひたすら施療する。
そして、不妊症が女性に原因がある場合、冷え症の婦人が多いと言われる故に、体を冷やす甘いものや酸性食を控えてください、と、お伝えした。
12月に入り、「だいぶ元気が出てきので、施療、少し休みます」と連絡があった。もう少し継続されたほうが良いとも思ったが、事情もありそうだったので了解した。

正月。Nさんから年賀状が届いた。
「昨年はいろいろありがとうございました。おかげさまで体調も良く、どうも妊娠したみたいです。まだ、どうなるか、分かりませんが、落ち着いたら、また、伺います。」
それからしばらくして電話をしてみた。

「お久しぶりです。・・・・・妊娠は?」
「はい、今、3ヶ月です。・・・・ただ、安定期に入ったかどうかは、2月の定期検診を受けるまで分からないので・・・。」
「・・・じゃ、体、温かくして、大事にしてくださいね・・・。」

元気な赤ちゃんが生まれほしい、幸あれ、と、祈った

長谷川 友信

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