父親からの虐待を乗り越えて

Mさん(女性、48歳)が初めて来院した時は、20年の長きにわたるウツ状態と、恐怖感とともにやってくるパニック障害に、とても苦しんでいました。

また身体的には、左肩から頭にかけての激痛を常に抱えていました。
一人では地下鉄やバスには乗れないので、治療には、友人が付き添って来るほどでした。

すでに病院での精神治療や、さまざまな薬物治療をすべて経験済みといってもいい程の流浪の果てでした。
タオ療法による1度目の治療後、あれほど激しかった肩から頭にかけての痛みが、ほとんどなくなりました。

また2度目の治療後には、パニック感も、それほど長引かなくなったということでした。
しかし治療中や、または治療と治療の間には、彼女がこれまで押し殺してきた悲しさ悔しさなど、様々な感情が幼児期の記憶とともに激しく顕われてきました。

実はMさんは、幼児期からずっと、父親による暴力と性的虐待を受けていたのです。
しかし彼女は、その後の 治療を通して、少しずつ自分の押し殺してきた感情と向き合えるようになっていきました。

やがて彼女に、変化が現れてきました。
長期にわたって顔を合わすことを避けていた父親と面会したのです。
さらに彼女は、父親を許すことができたのです。
ついに恐怖感は、完全に消えました。
薬ももう必要とせず、気持ちも軽くなり、地下鉄にも一人で乗れるようになりました。

また彼女は、45歳で仕事をリタイアしていました。しかし、いつかまた働きたいという夢を持っていました。
そして今は、張り切ってパートの仕事をしています。
とうとう、夢を実現することができたのです。

アルフレッド・ミューラー (ウィーン・オーストリア)

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