希望の火通信〜タオ療法編〜(2023.1) 人が変わる時 ~『鏡の背面』(篠田節子著)を読んで ~

明けましておめでとうございます。

今年、みなさまにとって、すばらしい一年になりますように!
心よりお祈り申し上げます。
今月は、東京で臨床をしております中河妙水(なりみ)がお届けいたします。

風邪が流行していますね。
マスク生活が長くなり、呼吸が浅くなっているのが、とても氣になります。寒い時期ですが、胸を広げて、新鮮な空氣を深呼吸し、背筋や腕をのばしてくださいね。


人が変わる時

最近読んだ小説が、とてもこころに残りました。
今回は、そのことを少し書かせていただきます。
『鏡の背面』(篠田節子著)というタイトルです。

ざっくりとしたあらすじを(文庫本裏表紙の文章を参考に)紹介すると、

薬物やDVなどで心身に傷を負った女性たちを保護する施設で火災が発生した。
この火災により、赤ん坊を助けるために身を挺して亡くなった、聖母と讃えられ、「先生」と慕われていた女性が、実は「先生」になりすました別人で、じつは、何人もの男性を殺めた毒婦だった、、。

というサスペンスです。

自分の邪魔になったり、何の得にもならないとなると、良心の呵責もなく人を殺めることができる女性が、なぜ、最後には赤ん坊を助けるために犠牲になって自分が死んでいくようなことができたのか、、?
その謎を追っていくのです。

お金目的で計画を立て、「先生」を殺め、すり替わりなりすますために、「先生」の本棚にあった本を、ひそかに自分で集め全部読み、「先生」が語るような嘘の物語をつくり、自分があらゆる角度からも見れるように鏡を何枚も貼り合わせた部屋で立ち居振る舞いを訓練しながら、話すことも発想も何もかも「先生」になることを自分に課し、「先生」になりきっていく、、、。施設の女性たちと24時間生活をともにするのだから、徹底しています。

約一名を除いては、だれも別人とは氣づかないほどに、なりきっていくのです。
そして、なんと、20年以上も「先生」として、生きることになるのです。

極限までなりきったことで、反対に、殺めたはずの「先生」の魂が、自我を突き破って現れでてきたかのように変容していく、、。その変容は、「先生」をも超えるほどになり、毒婦の片りんさえもなくなっていくのですが、そんなことがあり得るのだろうか、、、?

 

神の愛が、もっとも注がれているところ

すり替わり、なりきっていく中で、「自分」というものが、無くなっていく恐怖に駆られたのか、この毒婦は、自分の半生をワープロのフロッピーディスクに残していました。
はじめは、お金目当てであったこの毒婦の、変化が示されていきます。

自分がどんな環境で育ってきたか、どんな人間と出会い、などと詳細に記述していくのですが、自我の抵抗はだんだん弱まり、内容に「先生」が色濃く出てくるようになります。

そして、ついに、下記のような言葉を残すのです。

「光は天からなど射してこない、光は深い穴のあらゆる不幸の詰まった、泥の下から射してきて、神の存在を教えてくれる。救いは低いところにこそある。・・・行動したとき必ず、神様は後押ししてくれる。黙ってお祈りしていてもだめ。なぜなら神様は一番下の、下の、穴の底のあらゆる不幸の詰まった、泥の下にいて、こんな私たちの闘いを見守ってく(れるから)」

この言葉は、心の奥にずんと響き、何度も読み返しました。

このくだりを読んだ時に、タオ療法創始者の遠藤喨及先生が著わされた詩集『タオの詩』の中の一節を思い出し、なにか腑に落ちたような氣がしました。

 

「一者(神、仏)の大愛が
何よりも、深く深く、注がれているのは、
あなたの心の中の、最低、最悪の部分。」

「自らを悪と認識している、その心の部分にこそ、
もっとも深く、もっとも篤く、
一者の大愛が、惜しみなく降り注がれているのさ。」


心の底の最低最悪のところに、一者の大愛が注がれていると氣づいた時に、初めて人は変わるのかもしれません。それは、当人にとっては、圧倒的な体験として感じられるものなのではないでしょうか? この「先生」になりすました女性が、必死に施設の女性たちのために祈り、まさに利他のこころで行動しようとした、だからこそ、神を実感することになったのだろうと、想像します。

そうなろうとして、「先生」にすり変わったわけではなく。

改心しようとしたわけでもなく。
図らずも、ただただ一者の大愛に触れ、

魂は磨かれ、「先生」を超えていく、、。

人間は、こころの底の底で、「深い穴のあらゆる不幸の詰まった、泥の下」を共有しているからこそ、他者に共感できるのだと思います。
そこは、自他の区別なく痛みを共感できる場なのでしょう。

泥の下から射してくる光は、どれほどまばゆいだろう?
その光でなければならない。
その光だけが、いやすことができる。

それは、自分の心の深みにあることを、だれもが、ほんとうは知っているのかもしれません。


記:中河妙水(なりみ)                                                  

10代の頃から、人間存在の不思議への探求心が強く、美術、心理学、東洋医学、仏教を学ぶ。
やがて「タオ指圧」の本に出遭い、”これしかない!”と感動。2001年から毎月、タオ指圧修行のため、北海道から東京まで通い続けた。
東京に移住後、東京のタオ指圧センターで臨床に従事するようになる。
特技は、ものまね/演技(元演劇部)で、趣味はガーデニング。東京センターのガーデン造りを、仲間と共に楽しんでいる。

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